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戦術核のありかたと地政学戦略: NPT再検討会議準備委の焦点

更新日:2023年8月3日

こんにちは、サニーリスクマネジメントです。本日のブログでは、7月31日から開催されているNPT再検討会議準備委員会の動きについてお伝えしていきます。


「冷戦の終盤以来、核兵器が使用されるリスクがこれほど高まった時期はなかったが、同時に核兵器の使用を阻止しようとする体制がこれほど脆弱になったこともなかった。」


これは、7月31日午後(日本時間)にウィーンで開幕したNPT再検討会議の準備委員会において、国連の中満軍縮担当上級代表がスピーチで述べた言葉です。東欧を中心に核兵器使用の脅威が示唆される中で行われた準備委員会では、NPTの進展による対応が期待される事案として次の4つが取り上げられました。


1. 核兵器への重点がますます高まることで不安定な治安とその産物の両方が増大する、鶏が先か卵が先かというシナリオ

2. 現在の地政学戦略に基づく状況(大国の軍備管理体制のあり方や条約の機能)が、核兵器のない世界を達成する取り組みに弊害をもたらしていること

3. 技術の進歩とサイバー空間及び宇宙空間における新領域の出現により明らかになった脆弱性

4. 世界中で深刻化する不平等、食料安全保障と健康へのアクセスに対する課題の顕在化と気候危機の悪化による更なる悪化などの困難な世界情勢


やはり特に注目したいのは1と2で、現在進行形でリスクの高まっているウクライナ情勢から目を離すことはできないでしょう。今のところ核兵器は使用されていませんが、こうして外交ベースのリスクマネジメントを行っている一方で戦場では核兵器使用の危険性は確実に高まっています。というのも、ロシアは冷戦終結以降の体制の中で次々と軍縮や外交に関する協定等を破棄し続け、現在では「エスカレーション抑止政策」を掲げているのです。この「エスカレーション抑止政策」とは、自国が通常戦力で劣勢に立った場合、相手の戦意を欠くことを期待し恫喝的に低出力の戦術核を1発使用するという個別的自衛権的な戦術であり、NATO軍をはじめとした軍事的な介入を牽制している要素の一つになっています。しかし、仮に「エスカレーション抑止政策」が実行された場合、「核の撃ち合い」が不可避になることも覚悟しなければなりません。なぜなら、西側諸国は「核の傘」による集団的自衛権を安全保障を採用している国々で構成されているからです。「エスカレーション抑止政策」での1発がどこに落とされるかや外交の状況にもよりますが、時折ニュースや書籍で聞かれる「全面核戦争」の可能性もゼロとは言い切れません。


日本国内を見ているとこのような緊迫感のある風潮はさほど大きくはないように見えますが、世界情勢を見ていると、日々パッチワークのように世界各地で情勢悪化を防ぐために綻びを直す取り組みが行われており、またある程度の警戒も行われています。例えばウクライナ情勢が急変したときからDEFCON(Defence Rediness Condition: デフコン。戦争準備体制に関する米国防総省の規定)は「デフコン3」に引き上げられており、米国においては「完全な平時ではない高度な防衛準備体制」が敷かれています。大国にとってはいつまでも悠長にはしていられないものの必要以上に当事国を刺激できないというある種のデッドロック状態が発生しつつあるのです。このような状況下で行われているNPT再検討会議準備委員会。31日は各国の代表が演説を行い各々の核の戦術及び平和利用に関しての意見を交換しており、また8月2日には広島市長・長崎市長・被爆者団体代表など日本からのメッセージも届けられます。11日までの約1週間半の期間で、2026年に開催のNPT再検討会議に向けた準備が進められます。



【参考文献】

Nakamitsu. I. (2023). "First Preparatory Committee for the 2026 Review Conference of the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons, "https://reachingcriticalwill.org/images/documents/Disarmament-fora/npt/prepcom23/statements/31July_HighRep.pdf .







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