令和8年熊本地震とSNSデマ─災害時の混乱を減らす情報リテラシー
- Hinata Tanaka

- 7月29日
- 読了時間: 10分
更新日:4 日前
※この記事は、2026年7月28日16時半頃から2026年7月29日17時までに報道各社や国・自治体により発表された情報やソーシャルメディアでの動きを中心に構成しています。詳細・最新の情報については国・自治体・企業等のWebサイトをご覧ください。(最新情報はこちら(国土交通省防災ポータル))
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☝️この記事のポイント:
災害時には自治体などが自ら情報を発信することが困難になることがある
近年はAIの普及や真偽の見極めが難しい情報も多く、一度立ち止まる習慣が必要
情報の正確性を確認して投稿・拡散することが被災地の復旧にもつながる
こんにちは、サニーリスクマネジメントです。2026年7月28日夕方に熊本県を中心とした大きな地震により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。発災直後から多くの人が被災地の状況を知らせたり、知ろうとし、SNS(ソーシャルメディア)を活用しているかと思われます。SNSは災害時の安否確認や支援情報の共有などで役立つ一方。災害直後は不安や混乱が広がる中で、誤った情報や根拠のない情報も拡散されやすくなります。
この記事では、10年前の平成28年熊本地震の際にSNSで拡散された偽情報を振り返りながら、令和8年熊本地震とSNSデマの広がりに関わる、2026年ならではのサイバー空間の特徴を見るとともに、そうした情報を発信・拡散せず、正確な情報を速やかに得ることのできる空間作りに対して私たちのできることについて考えていきます。
【目次】
災害時の情報インフラとしてのSNS
今や日常生活にも欠かすことのできないSNS(ソーシャルメディア)は、災害時にも情報源や連絡手段のひとつとして大きな役割を果たします。災害の発生した現場にいる人がSNSを通して現地の被害状況を共有したり、政府や自治体が公式アカウントで避難情報や対応状況を公開したり、安否確認情報や支援情報を投稿したりと、インターネットさえ繋がればスマートフォン1つで様々な情報を誰でも瞬時に交換できることには、災害時の情報インフラとしての機能的価値があります。
新潟県中越地震に見る「情報がないこと」の重大さ
また、SNSが普及したことはそのような「誰でも・すぐに・自分のタイミングで」情報を発信できるという特徴から、孤立した場所からの連絡をできる可能性も高まりました。例えば2004(平成16)年の新潟県中越地震における旧・山古志村では、内陸の直下型地震が引き起こした震度6強の揺れと大きな地すべりにより村全体が孤立し、道路だけでなく防災無線、固定電話と携帯電話などあらゆる連絡手段が不通になりました。旧・山古志村や震度7を観測した旧・川口町は、集落の孤立に加えて激しい揺れや停電、通信回線の寸断や混線などが重なり、気象庁への震度のデータ転送が遅れるといった影響も出た地域です。
令和8年熊本地震でも似たような状況か
新潟県中越地震で起きたことを振り返ると、令和8年熊本地震でも似たようなことが起きていることが分かります。7月28日16時27分に熊本県熊本地方の深さ16km震源としたM7.1の地震については、気象庁が同日17時30分からの会見で、熊本県の宇城市小川町、甲佐町豊内、嘉島町上島、鹿児島県出水市桂島の4箇所の地震観測点から震度データを受け取っていないと説明。いずれも様々な理由があり原因は特定できていないものの、熊本県の3カ所では震度5弱以上を想定、鹿児島県の観測点は計画的に停止していたものだと同庁が説明しました。この「計画的な停止」はメンテナンスや点検などで行われるものです。これら4観測点の推定される震度は熊本県の3カ所で震度6強、鹿児島県の1カ所で震度5弱であると、発災から1日が経とうとしていた29日15時に気象庁から発表されました。
震度データの転送が行われないという状況になるほどに大きな揺れを伴ったM7.1の地震も、内陸の浅いところで発生した直下型地震であるといえます。この地震により熊本県内の様々なところで建物被害や停電が発生。29日14日時点で停電が復旧した地域もありますが、熊本県県南広域本部(八代地域振興局)では非常用電源での稼働や一部通信設備の不通が起きていたり、氷川町役場では非常用電源での電源確保が続き、美里町役場では電源車を使用しての対応が調整されるなど、地震や被害の状況を確認するのに欠かせない通信が十分でない地域が多く存在することが分かります。今回の地震では高速道路の高架が断裂したり多くの道路がひび割れたりと、通行止めや通行が困難な場所も多くあったり、発災直後で自治体自身も被害状況の把握や災害対応に追われて十分な情報発信が行えなかったりすることで、各地域からの情報を得ることが非常に難しい状況。そうした中で住民の方などを中心としたSNSでの投稿が地域の様子を知る手がかりになっているという一面もあります。
なぜ災害時にデマや誤情報が広がりやすいのか
災害時に前述のような機能を持ちうるSNSですが、被害や救援に関する教法だけでなく、デマや誤情報、不確定な情報が多く投稿されているということも忘れることはできません。災害時は直接被災した人だけでなく、その被害を間接的に見た人にも不安や混乱が押し寄せます。その気持ちが「この情報は正確かどうか」という判断を難しくする可能性もありますし、人間とSNSの間には「その情報が事実であるかどうか」より「信じたいと思うかどうか」が優越する「ポスト・トゥルース」という現象が起きることがあったり、センセーショナルな言葉に衝撃を受けてリポストボタンを押したくなったりすることもあります。
災害時は、「この情報は被災地の人に伝えなければ」といった善意や焦り、「これは衝撃的だから多くの人に見てほしい」、「これはもしかして...」といった情報を伝えたいという気持ちがもとになった情報発信や拡散であっても、その情報が間違ったものであるがために、かえって被害を生んでしまうリスクがあるということは覚えておきたいところです。
平成28年熊本地震から考える災害時のデマ
そうしたSNSでのデマや誤情報の発信・拡散によって災害対応を難しくした事例のひとつが、平成28年熊本地震の中で発生しました。それが、駐車場の景色に1頭のライオンの写真を合成した画像を添えた「動物園からライオンが放たれた」という内容の投稿です。この投稿は人々の「街中にライオン!?怖い」「早く動物園に知らせねば」という気持ちと共に大量に拡散されました。これにより熊本市内の動物園が災害対応に加えてライオンなどの安全確認や電話対応など匂われたという事例があります。このほかにも、熊本県警は、平成28年熊本地震に関して「井戸に毒が撒かれた」「地震に関連して富士山噴火が起こる」「迷彩服を着たグループが被災した家で空き巣をしている」といった、実際には起きていないのに事実であるかのように広まった流言を2025年5月までに100件以上確認したとしています。
平成28年熊本地震に限らず、その時の災害とは関係のない過去の災害の映像や画像を投稿するユーザーがいたり、実在の住所を示して救助要請を装った投稿があったり、被害情報を誤認したまま投稿してしまったりと、故意(意図的)・過失(ミス)に関わらず、災害時は様々な要因でデマや誤情報が発信・拡散されてしまいます。
令和8年熊本地震のSNSデマとAI時代のサイバー空間
令和8年熊本地震でも、これまでの災害と同じように、「地震発生前に予測を発表し発生場所を正確に的中させた」、「この地震は人工地震だ」といった投稿や、過去に発生した別の災害での映像を今回の地震のものとしての投稿など様々なデマや誤情報が投稿・拡散されています。この中でも特に2026年という時代に顕著なものが、AI生成の文章、画像や動画です。
生成AIが普及したことにより、誰でも簡単に本物そっくりの画像や動画を生成・公開することが可能になりました。また、文章だけであっても生成AIを使えば、感情を刺激するような文章を短い時間で大量に生成することができます。さらに、近年のSNSでは日常的に「外国人犯罪が起きるかもしれない」、「これはあの国が人工的に起こしたものだ」、「この地震の裏で何かが動いているかもしれない」、「地震と同時に大きな雲が出た」、「こんな時でも政治家は災害に興味を示さない」、「子どもが『地震が来る』と言ったら地震があった」など、不確実な情報や関連性のないものを結びつけた情報が、比較的小さな地震や地震以外の災害に関連して投稿されており、個人がもともと持っている価値観や信念、不安に訴えかけるような情報が拡散されやるいともいえます。
こうした、本当にあったことを撮影したものなのかAI生成なのかの見分けや、投稿・拡散ノウハウやジャンルの確立した情報は、人々の情報発信のハードルを下げる一方で、発信者の責任や情報の受け手の判断力などの重要性を高めています。
災害時のSNS情報を確認する5つのポイント
災害時に投稿・拡散される情報には様々な特徴があり、従来は一次情報を探したり、日付を見たり、発信元を確認したりといった技術的な点に着目して誤情報かどうかを見極めるといった方法が主流でした。現在もこれらの方法は有効ですが前述のような状況で「事実のように見える」あるいは「気持ちを突き動かされる」投稿に出会った場合には、少し違う方向からの注意が必要です。
災害時に拡散されやすい誤情報やデマの特徴を5つ挙げると、次のようなものがあります:

不安を煽る
怒りを刺激する
善意を利用する
科学的根拠がない
「〜を隠している」など検証困難な内容
これらはどれも、情報の受け手に対して「いいね」や「リポスト」ボタンを押させるために強い言葉や衝撃的な画像・動画を使う可能性があります。SNSで注目を集めて閲覧数や滞在時間を稼ぐ、いわゆる「アテンション・エコノミー」にも通じるものです。
こうした情報を見つけた場合は、いいねやリポストを押す前に立ち止まる勇気が大切です。この情報の本当の発信元は誰なのか、SNSだけでなくテレビ局や新聞社も同じような内容を出しているか、専門家が同じ内容について言及しているかなど、複数の情報源を探したり、ファクトチェックに関する情報を見たりしながら、その情報が本当のものであるのか、あるいはデマや誤情報、AI生成なのかということを見極めることが大切です。
情報を発信し拡散する私たちに求められること
災害時はSNSでたくさんのユーザーが同時多発的に投稿や拡散をするだけでなく、国や自治体、テレビ局や新聞社なども次々に多くの情報を公開し、またそれを受け取った個人がSNSで解釈・編集・拡散します。このような情報過多・情報氾濫が起きやすい状態のなかでどの情報が正しくて何が誤りなのかを見分けるのは簡単なことではありません。
また、被災地を思う気持ちやセンセーショナルな情報を誰かに伝えたい気持ちは大切なのですが、その情報がもしも誤情報であったり実在しない情報であったりした場合は、かえって被災地の混乱を増やす可能性もありますし、デマや誤情報が全国的に広がることで被災した街が復旧した後も風評被害などの影響を受け続けてしまう恐れもあります。
こうしたことから、これからの災害時におけるSNSでの発信や閲覧については、何もしないというわけではなく、国や自治体、専門家からの情報や、複数の情報元を突き合わせて「十分信頼できる」と確信を持てる情報だけを発信・拡散すること、少しでも「この投稿本当かな」と不安がよぎったら拡散しない、あるいは事実かどうかを確認してから発信や拡散をするかどうか考えることが大切です。正しい情報を届けることだけではなく、誤った情報や不確実な情報、因果関係の不明瞭な情報を広げないことも災害対応の一部であり、被災地外の人々が間接的に被災地の人々に対してできることでもあるのです。



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