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長崎市で救急搬送の選定療養費が導入...長崎で救急車は有料になる?制度をわかりやすく解説

  • 執筆者の写真: Hinata Tanaka
    Hinata Tanaka
  • 6月29日
  • 読了時間: 10分
💡この記事は10分で読めます

☝️この記事のポイント:
  1. 救急車の有料化と救急搬送の選定療養費は異なる制度である

  2. 目的は救急医療を必要な人へ届けることで、緊急性の低い場合に選定療養費を払う

  3. 救急要請を迷ったら「#7119」へ、緊急なら迷わず「119」へ


こんにちは、サニーリスクマネジメントです。ニュースで救急搬送の選定療養費に関する報道を見て、「長崎で救急車は有料になるの?」という疑問を持った方も多いのではないでしょうか。2026年7月から長崎市では「救急搬送の選定療養費」が導入されます。しかし、これは「救急車の有料化」とは異なる形で必要な人に素早く高度な医療を提供する制度です。


この記事では、「救急車は有料になるの?」「どんな場合にいくらかかるの?」「迷ったら119番していいの?」といった疑問について、制度の概要や導入の背景をわかりやすく解説します。


【目次】


長崎で救急車は有料になる?実は有料化ではありません


2026年7月1日から長崎消防局管内の救急搬送において選定療養費が導入されます。こう聞くと「救急車を呼んだらお金がかかるの?」と思う方もいるかもしれませんが、これは、救急車が有料になるということではありません。


救急搬送における選定療養費導入以降も、今までと変わらず救急車を無料で呼ぶことができます。ただし、一定の条件に当てはまる場合は、選定療養費として7,700円を支払う必要があります。


まずはこの「救急搬送の選定療養費」とは何なのか、そして救急搬送で選定療養費を払う必要が出てくるのは、どういった場合なのかということをみていきましょう。


地下トンネルを走る白い救急車の後ろ姿。赤い警告灯が光り、長時間露光で光跡が伸びたスピード感ある場面。

救急搬送の選定療養費とは?有料化との違いは


「救急搬送の選定療養費」とは、どういった料金を指すのでしょうか。まず、選定療養費」とは、紹介状を持たずに大病院を受診した場合に患者が追加で負担する費用を指します。救急搬送においては、救急車で対象の病院へ搬送されたものの、診察した医師が「緊急性がない」と判断した場合に、病院へ7,700円の選定療養費を支払うことがあります。


つまり、「救急搬送の選定療養費」とは、救急車を呼んだこと自体に料金がかかるわけではなく、一定の条件に当てはまった場合のみ、搬送先の病院へ追加の自己負担が発生する制度なのです。


「救急車にお金がかかる」と聞くと、海外のように救急車を呼んだ時点で料金が発生する制度をイメージする方もいるかもしれません。しかし、今回長崎市で導入される「救急搬送の選定療養費」は、そのような制度とは異なります。ここでは、救急車が有料の地域の一例としてニューヨーク市消防局を取り上げ、救急車の有料化と、救急搬送の選定療養費との違いを見てみましょう。


表1 有料の救急車と救急搬送の選定療養費の違い


有料の救急車

救急搬送の選定療養費

救急車を呼ぶ

原則有料

無料

支払いの発生する

タイミング

救急車を

利用した時

病院に搬送後医師が

緊急性なしと判断した時

支払う相手

救急搬送事業者

搬送先の病院

金額

5万円程度

7,700円

対象となる人

救急車の利用者

一定の条件を満たした患者


この表から分かるように、「救急車が有料化する」ということは、救急車を利用することそのものにお金を払うということであり、料金は救急搬送事業者、ニューヨークの場合はニューヨーク市消防局に料金を支払うことになります。一方、「救急搬送の選定療養費」は救急車を呼び病院に搬送すること自体は無料であることを前提として、病院で発生する追加の費用という立ち位置にあります。


なぜ長崎市で導入されるの?


ここまで救急車の有料化と救急搬送の選定療養費の違いを見てきました。ではなぜ、この「救急搬送の選定療養費」が長崎市で導入されることになったのでしょうか。


先行事例からみる制度導入の背景と効果


まずは、2024年に全国で初めて救急搬送における選定療養費を導入した茨城県の導入前の状況、そして導入後の状況を見てみましょう。ここに救急搬送の選定療養費導入の必要性と、それのもたらす効果が現れています。


救急搬送における選定療養費を導入する前の茨城県内では、救急搬送の6割以上が一般病床数200床以上の大病院(大学病院や重症患者を受け持つ地域の拠点となる病院)に集中し、そのうち半数は軽症患者が占めているという状態でした。


高度な医療を必要としていたり、重症であったりする人を優先的に大病院へ搬送するのが理想ですが、軽症患者をその大病院に搬送することで救急医療現場がひっ迫し、救えるはずの命が救えなくなることが心配されていた、というのが茨城県における救急搬送の選定療養費導入の経緯です。


茨城県は、救急搬送の選定療養費導入後、この政策の検証結果を定期的に公開しています。今回は2025年12月から2026年2月までの検証結果をもとに、茨城県で救急搬送の選定療養費を導入した結果、救急搬送にどのような変化が起きたのかを見てみます。


まず気になるのは、「救急搬送の選定療養費を導入して、実際どれくらいの人が支払いの対象になったの?」ということだと思います。茨城県では、検証期間中に対象病院が受け入れた救急搬送件数は22,502件で、そのうち徴収が行われた件数は587件でした。大病院などの徴収対象の病院に搬送された人のうち、2.6%が救急搬送の選定療養費の支払いの対象となっています。言い換えると、約97%の救急搬送では選定医療費が徴収されていません


また、茨城県では制度導入後に救急搬送の状況にも変化がみられています。制度導入前と導入後を比較すると、軽症の救急搬送が約23%減少しました。一方で、救急隊が病院探しに時間を要する「救急搬送困難事案」は約43%減少しています。制度導入後に県から医療機関や消防本部へ呼び控え事例の報告を求めたところ、報告はありませんでした。


これらの結果から茨城県は、救急搬送における選定療養費を導入したことで、救急搬送の主要な数値指標が減少傾向にあり、救急医療のひっ迫緩和や救急車の適正利用に対して継続的に一定の効果があると考えられる、というように評価しています


長崎市の救急搬送では何が起きている?


街を歩いていると、毎日のように救急車を見かけたり、サイレンを聞いたりする人もいるでしょう。また、消防署の前を通ったら救急車が出払っているのをよく見かける、という人もいるかもしれません。長崎市消防局管内でも2024年以降、救急搬送は2万5千件を超えるようなり、それと同時に医療機関が救急搬送を受け入れることができない回数も増えています。


救急搬送の選定療養費を導入する以前の茨城県と似たような状況で、長崎市でも救急搬送の5割以上が大病院に集中し、そのうち35%を軽症者が占める、救急医療体制のひっ迫が心配される状態にあります。こうしたことから、長崎市でも救急搬送の選定療養費が導入されるのです。


どんな場合に費用がかかる?


では、長崎市における救急搬送の選定療養費導入によって、どのような場合にどれだけの費用がかかるようになるのでしょうか。長崎市消防局管内で救急搬送された場合に選定療養費を支払う必要が出る条件は以下のとおりです:


①長崎大学病院、長崎みなとメディカルセンター、長崎原爆病院に救急搬送される

救急車要請時の緊急性が認められない


この2つを満たすと、上記の病院で7,700円(税込)の選定療養費を支払うことになります。長崎大学病院と長崎原爆病院では、夜間や休日の搬送の場合に時間外選定療養費として5,500円も積算されます。この選定療養費は、病院での会計の時に診療料などと一緒に患者が支払います。第三者が救急車を呼んだ場合も同じです。


選定療養費の対象になるケース・ならないケース


救急搬送の選定療養費を支払うことになる条件は分かりましたが、もし自分や家族の具合が悪い時、大怪我をした人や具合の悪い人を見かけた時に、「この症状で救急車を呼んだら選定療養費の対象になるのでは...?」と通報をためらうこともあるかもしれません。


救急隊は基本的に、市民から救急搬送を求められた場合はそれを断ることができません。だからこそ、救急車を呼ぶ立場になった場合もすぐに救急車を呼ぶべきなのか、それとも自宅での療養やかかりつけ医への受診を優先すべきなのかを明らかにすることが大切です。


選定療養費の対象となった主な症状


茨城県において救急搬送の選定療養費を支払う対象となった主な症状には、次のようなものがあります。括弧内は2025年12月から2026年2月の間に選定療養費の対象となった救急搬送のうち、その症状が占める割合です


  • 打撲(7.5%)

  • 風邪の症状(7.3%)

  • めまい・ふらつき(7.0%)

  • 腹痛(6.0%)

  • 泥酔・酩酊(3.9%)


また、長崎市消防局は、上記の他に救急搬送の選定療養費の対象となるかもしれない『緊急性が認められない可能性がある主な事例』として、軽い切り傷や擦り傷のみ、37.4℃以下の微熱のみ、慢性的な歯の痛み、慢性的な腰痛、何日も症状が続いているが特に悪化していないといったものを挙げています。


このような症状で救急車を呼んだ場合、必ず救急搬送の選定療養費の対象になるとは限りません。比較的軽症でも、その他にも症状がある場合や、もうろうとしている、はっきりとした受け答えができないなどの場合は緊急性が認められる可能性のある症状にあたることがあります。


選定療養費の対象とならない症状


長崎市消防局は、選定医療用費の対象とならない『緊急性があると判断される可能性の高い主な事例』として、物を喉に詰まらせて呼吸が苦しい、急な息切れや呼吸困難、けいれんが止まらない、大量の出血を伴うけが、広範囲のやけどなどを挙げています。


熱中症や小児の熱性けいれん、てんかん発作などに関しては、救急車が病院に到着した時に症状が改善しており結果として「軽症」と診断されても、救急車を呼んだ時点での緊急性が認められるケースにあたるため、選定療養費の対象とはなりません。


救急車を呼ぶか迷ったらどうすればいい?


このように、救急車を呼んで救急搬送の選定療養費の対象になるかどうかは、現場の判断と搬送される人の症状によって異なります。しかし、私たちが突然具合が悪くなったり怪我をしたり、またそういった人と居合わせた場合にそれを判断するのは非常に難しいことです。


そこで、救急車を呼ぶか迷ったときに相談できるのが「長崎県救急安心センター#7119」です。電話で「#7119」を押すと繋がります。24時間対応で、看護師が相談した症状に合わせて、救急車を呼んだ方が良いか、それ以外の方法(救急車以外での受診、経過観察など)をとった方が良いかを助言してくれます。小児の場合も、「#8000」に電話をかけることで子どもの症状に合わせて救急要請の有無も含めたアドバイスを受けることができます。


全国で初めて救急搬送の選定療養費を導入した茨城県では、おとな救急電話相談#7119への相談が制度導入前の同じ時期と比較して3,115件増加しており、119番をする前に救急搬送を要請すべきかどうかのアドバイスを受ける人が増えたことがわかっています。


救急車を呼ぶべきか迷った時は、「とりあえず119番に電話しよう」から「#7119(#8000)に聞いてみよう」へ。また、風邪だけなど比較的軽症な場合はかかりつけ医や近隣のクリニックを受診するなどの工夫をすることが大切です。


まとめ


救急搬送の選定療養費は、救急車を利用しづらくする制度ではありません。限りある救急医療体制を維持し、本当に緊急性の高い患者へ、より速く医療を届けられるようにするための仕組みです。


そして、救急隊や医療機関だけでなく、私たち市民一人ひとりも、地域の救急医療を支える大切な存在です。症状が比較的軽く自力で受診できる場合は、まずはクリニックやかかりつけ医を受診することも選択肢の一つですし、救急車を呼ぶべきか迷ったときは、救急電話相談「#7119」などを活用することで助言を受けることができます。こうしたひとつひとつの行動が、救急車や救急医療を本当に必要としている人へ、より早く医療を届けることに繋がるのです。


一方で、命に関わる可能性がある症状では、選定療養費を心配して救急車を呼ぶことをためらう必要はありません。救急搬送の選定療養費導入後も、緊急性が認められる場合はこれまでどおり適切な救急医療を受けることができます。


「迷ったら#7119、緊急なら迷わず119番。」


この基本を知っておくことが、自分や家族の命を守るだけでなく、地域全体の救急医療を支えることにもつながります。

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