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再び増加傾向か、ソマリア海賊の今

こんにちは、サニーリスクマネジメントです。

今回のテーマは「ソマリア海賊」。海賊というと中世ヨーロッパのイメージや漫画のキャラクターを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、実は現代にも海賊は存在しており、世界共通で海上交通の脅威となっています。彼らは「現代海賊」とも呼ばれ、1980年代後半から国際問題として取り上げられるようになりました。特にインドネシア沖をはじめとした東南アジアやマラッカ海峡、ソマリア沖・アデン湾などが海賊の多く発生する地域として認識されているほか、IMB(International Maritme Bureau=国際海事局(英))による2023年12月の報告書ではギニア湾での海賊事案も微増傾向にあるとされています。今回は、これら現代海賊の中でも2011年頃に多発し一時は世界の海賊事案の半数以上を占めるほどに活発に活動していたソマリア海賊についてみてみましょう。


ソマリア海賊といえば、あの映画...?


ソマリア海賊が多くの人に知られるようになったきっかけのひとつとして、2013年の映画「Captain Phillips(邦題: キャプテン・フィリップス)」があります。2009年にソマリア沿岸で発生したコンテナ船「マースク・アラバマ」号乗っ取り事件をもとにした伝記映画で、乗っ取られたコンテナ船で船長を務めていたリチャード・フィリップス氏とジャーナリストのステファン・タルティ氏による原著「A Captain's Duty」とともによく知られている作品です。


「マースク・アラバマ」号乗っ取り事件が発生した2009年は、ソマリア沖・アデン湾での海賊事案件数が約2倍に急増した年でした。同地域での海賊事案は2011年まで高水準で増加傾向にありましたが、2012年に約70%減と大きく減少したのち、2022年まで1桁台または0件と低水準で推移しています。ソマリアは1988年から内戦状態(ソマリア内戦)にあり、ソマリ族に属する各氏族の対立が激化している状態が続いていました。この内戦の中で当時政権が崩壊し、長らく全土を実効支配する政府が存在せず実質無政府状態にあったソマリアは情勢の混乱や貧困に苦しみ、その中で海賊行為が増加したと考えられています。海賊事案が目立った2009年以降はG7を中心にソマリア沖・アデン湾の海賊問題が取り上げられるようになり、ソマリアは外国から周辺の海上警備や経済協力などの支援を受けながら2012年にソマリア連邦共和国樹立、翌年承認となり、更なる支援を受けながら以前より安定した情勢を保っています。内政が比較的落ち着いたことが昨今の海賊事案減少の一因であるといえます。


ソマリア海賊の脅威


ソマリア海賊には主に2つの脅威があります。それは、①地政学的リスク、②ソマリア海賊の特性です。


まず①地政学的リスクについてですが、ソマリアはアフリカ大陸の東端にある国で、アラビア海に面しています。特に北部は隣国のジブチと対岸のイエメンに囲まれたアデン湾に面していますが、このアデン湾はインド洋・アラビア海経由でスエズ運河に向かう際には必ず通らなければならない場所であり、世界の海上交通の要所のひとつにあたります。アデン湾から紅海に入りスエズ運河へ向かうという航路で、様々な国の商船が航行していました。現在は、ソマリア海賊からの攻撃回避に加え、2023年10月からのイスラエルとパレスチナのイスラム教スンナ派イスラム原理主義組織「ハマス」との軍事衝突に伴い紅海でイスラエルに関係する船舶に対して攻撃を行っているイエメン北部のイスラム教シーア派組織「フーシ(アンサール・アッラー)」の活動の影響で紅海の航行も危険な状態にあり、喜望峰廻り航路への迂回などの施策をとっている船舶も多く存在します。


次に②ソマリア海賊の特性に関してです。実はソマリア海賊は他の海賊と異なる目的で活動している可能性が高いとされています。海賊は一般的に強盗を目的とする傾向にありますが、ソマリア海賊はシージャックによる船舶の乗っ取りと身代金の請求を目的にしているとされています。また、ソマリア海賊は小型の漁船を改造した高速ボートを使用していることから一般の漁船との区別が難しいという点も特徴的です。


最新事例とソマリア海賊対策


海賊事案件数が減少しているソマリア沖・アデン湾ですが、近年、再びその活動がみられるようになっています。例えば、2023年11月27日、米国防総省は同月26日にアデン湾で発生した商業タンカーの一時拿捕についてソマリア海賊の実行との見解を示しています。この事案では、商業タンカー「セントラルパーク」が拿捕され、米海軍の軍艦がタンカーから発せられた救難信号に応答。投降した5人の武装した人物はソマリア人であるち見られており、米国防総省はこの事案について海賊行為に関連していることは明らかだと言及しました。


このほかにも、2024年1月29日にはインド軍がソマリア沖でシージャックされたイランの漁船2隻を解放するなど、インド洋側の事案も再び確認されています。また、同日、セーシェル軍もソマリア沖でシージャックされたスリランカの船を解放しています。先述の紅海における「フーシ」の活動もあり、これらの事案がソマリア海賊による海賊事案なのか、「フーシ」による攻撃の一環なのかは今後拘束した人物の取り調べ等を進めながら慎重に判断する必要がありそうです。


いずれにせよ、じわりとその件数が増加しているソマリア沖・アデン湾での海賊事案。周辺では、各国が協力して海賊対処を行なっています。2008年からはドイツ・スペイン・オランダ・フランス等EU加盟国を中心とした「アタランタ作戦」が稼働しているほか、2009年からは日本・アメリカ・イギリス・韓国・トルコ・パキスタン・シンガポールなどで構成する第151連合任務部隊によるゾーン・ディフェンスが行われており、さらに、日本・インド・中国・韓国などが独自に自国の艦船を派遣し警戒監視や護衛にあたっています。このほかにも、ODA等のソマリアに対する支援など、内側と外側の両方から海賊事案を未然に防ぐオペレーションが行われています。また、船舶自身も武装警備員を配置するなど、国家レベルだけでなく、経営・現場レベルでも対応がなされています。


ソマリア沖・アデン湾の今後


ソマリア沖・アデン湾は2022年まで海賊事案が極めて少なくなった場所でしたが、イスラエルとハマスの軍事衝突の影響やそれに伴う紅海での「フーシ」の攻撃など、ここ1年で付近の情勢が大きく変化しました。


また、ソマリアにおける貧困などの課題も完全に解決したわけではなく、経済状況によっては再びソマリア海賊が増加する可能性もあります。ソマリア沖・アデン湾におけるソマリア海賊の海賊事案は、今後も向き合っていくべき国際課題のひとつでしょう。

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