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執筆者の写真Hinata Tanaka

地政学的に日本を見る


昨日はウラジオストクでロ朝首脳会談があったり、日本海に向けた2発のミサイル事案があったりと東アジア情勢に少なからず影響を与える出来事が続きました。今後の流れに注視が必要な東アジア情勢ですが、今回は私たちの過ごしている日本の「国土」について地政学的観点からみてみましょう。


海と陸の力


地政学では、「シーパワー」、「ランドパワー」という概念があります。これはその国における領土と領海をみた際に、どちらのほうが優位性が高いかという見方で考えることができます。


例えば、「ランドパワー」を持つ代表的な国がロシア連邦です。ロシア連邦は北側が北極圏に向かい合っており冬になると海が凍ってしまいますが、そのかわり、東ヨーロッパから東アジアに及ぶ広大な領土を有しています。旧ソ連時代であれば旧構成国の領土も加わり、現在よりも大きなランドパワーを有していました。


一方、「シーパワー」を持つ代表的な国としてはアメリカ合衆国が挙げられます。アメリカ合衆国は本土が北太平洋と北大西洋に面していることに加え、北太平洋のほぼ中心にハワイ州が存在しています。また、古典的な「海洋国家」として知られていたのはかつてのイギリス帝国で、本土が島国であることに加え、カナダ・オーストラリア・ニュージーランド・インドやエジプトをはじめとしたアフリカ大陸東部や南アフリカ、さらに様々な島国を統治し、ほぼすべての海洋へのアクセスが可能な国でした。日本も島国国家ですから、「シーパワー」の国にあたります。


カギは海峡


大きなシーパワーを保有する国にとって必ずついてくるのが、海峡の問題です。これは、地政学的な用語では「チョークポイント」と呼ばれる場所で、太平洋や大西洋などの海洋に出る際に必ず通らなければならない海峡や運河を指しています。チョークポイントは物資の輸送として広く使用されていることもあり、世界規模の貿易が盛んな現代においては経済や商業の面でも重要視されるほか、軍事上は兵站(ロジスティクス)の確保やシーレーン(海上交通路)防衛のためにも必要となる場所です。


世界の有名なチョークポイントとしては、スエズ運河やパナマ運河、ジブラルタル海峡、ダーダネルス海峡、マラッカ海峡などが挙げられます。日本近海では宗谷海峡・津軽海峡・関門海峡・対馬海峡・大隈海峡があり、日本にほど近い台湾には台湾海峡があります。


チョークポイントには多くの国や通行権を持つもの同士の利害関係が絡んでいるため、しばしば外交的紛争が起きます。また、チョークポイントを隔てて2つ以上の国家が対岸に存在していることが多く、また海洋進出を試みてチョークポイント自体を得ようと試みたり、対戦国のチョークポイントを破壊することで海洋進出を阻もうと試みたりするなど戦いの場所とされてきたものも存在します。


例えばスエズ運河では保有者の問題や第二次中東戦争がありましたし、パナマ運河には第二次世界大戦で旧日本軍が攻撃を計画していたといった過去もあります。また、ダーダネルス海峡は第一次世界大戦中のガリポリの戦いの戦場となっているほか、世界的なチョークポイントとして知られている対馬海峡も日露戦争における日本海海戦の戦場となりました。また、近年情勢が緊密化しているのが台湾海峡で、100と数十kmという距離で中国と台湾が相対しているチョークポイントになります。


シーパワーは強い?


シーパワーとランドパワーにはそれぞれの良さがあり、同じように弱点もあります。例えばランドパワーでは、海よりも比較的侵攻しやすいというメリットがあります。ただこれは、侵攻されやすい・戦況を反転させられやすいというデメリットと表裏一体です。


シーパワーは比較的防衛に有利な面があります。というのも、四方を海に囲まれ陸上でどの国とも接していない海洋国家というのは、そうそう簡単に攻められるものではないのです。特に長距離の航行が可能な船舶や航空機やミサイルが発明される前であれば尚更で、海という自然の防護壁を持っていたも同然でした。


ただ、防衛に有利なシーパワーではありますが、特に領海が広くても領土が狭い国では、一度攻め入られると回復が難しいという難点もあります。個別的自衛権の範囲内で防衛できるならともかく、集団的自衛権を活用して応援を呼ぶにしても、応援してくれる国の軍が海を越えてやってくるまでに領土はどんどん取られてしまうという状況が起こります。原則として武力で失った領土は武力をもってでしか回復できないため、こうした海洋国家では海兵隊や水陸両用の部隊など、上陸作戦等に長けた軍や部隊が必須となります。


さて、今回は「シーパワー」、「ランドパワー」を軸に日本を考えてみました。海洋国家で大きなシーパワーを有している日本は、実は地政学的には強力な場所に位置しているのです。近年国防力に関して様々な議論がなされていますが、意外にも自然に恵まれているようです。




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