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アニバーサリー報道による伝承

こんにちは、サニーリスクマネジメントです。

今日9月1日は「防災の日」。今年はこの「防災の日」が制定されるきっかけとなった1923(大正12)年9月1日の関東大震災からちょうど100年という節目の年となっています。「防災の日」はこの関東大震災だけでなく台風や風の多い日とされる「二百十日(にひゃくとおか)」という雑節にも重なっており、地震だけでなく災害全体に対する理解や準備を促進するための日とされています。


「防災の日」には、東京などで関東大震災の大法要や追悼式が行われるほか、政府や自治体、企業などで防災訓練が実施されます。また、各家庭でこの日を目安に非常用持ち出し袋(防災リュック)や屋内外の災害対策などの見直しもされるでしょう。さらに、メディアを見てみると新聞やテレビ、ラジオ、そしてインターネットやSNSまでに至るさまざまなところで、防災や関東大震災に関するニュースや記事が多く発せられています。


過去を振り返るために


9月1日の「防災の日」に際しては、関東大震災に関して広くさまざまなメディアで報じられています。これは今年が発災から100年目にあたるということも関係していますが、実は災害の大小や新旧を問わず、また災害だけに留まらず世間を揺るがした事件や事故に関しては、きまってそれらが発生した日にその出来事に関する特集が組まれるのです。


ある災害や事件事故が発生した日に発せられるそれらに関する報道は、アニバーサリー報道(記念日報道やアニバーサリー・ジャーナリズムとも)と呼ばれています。アニバーサリー報道は、過去にどのような出来事が発生したのか、その出来事によってどれだけの地域や範囲の人や財にどのような被害や影響が及んだのかを振り返るための特別な報道です。


有効な伝承の手段として


クライシスを伝承する手段には文書や碑、語り部の活動などが主なものとして挙げられますが、アニバーサリー報道で重要となるのは、音声・画像・動画です。これらは実際の出来事が発生した現場の状況を如実に表すものであり、視覚や聴覚に訴えて印象付けたり、当時の様子をそのまま映したものを見ることで視聴者に対してイメージを持ちやすくさせたりする効果を持ちます。


関東大震災に関しても、発災直後から復興までの様子が多くの人の手で写真や映像に収められており、それらは報道特集で使用されるほか、中にはインターネットで公開されているものもあり、簡単に見ることができます。


伝承の手段として明治以前は書物や絵などでしか窺い知ることのできなかったものが、時代が下るとともにより臨場感とリアリティのあるものになっていきます。画像やサイレント動画としては明治・大正ごろから記録されるようになり、記録映画として残された動画は弁士による解説をもって上映されることもありました。昭和に入ると映画界のトレンドがサイレント(無声映画)からトーキー(発声映画)に移行したことにより、現場で録音した音声やナレーションを付けることができるようになり、よりリアリティのある表現が可能となっています。映画が一大産業となる頃には報道を目的としたニュース映画が長編映画の幕間等で上映されるようになり、その流れでニュース映画や記録映画などのジャンルの隆盛が始まります。戦後はテレビの普及に伴いニュース映画や記録映画の舞台は徐々に「ニュース番組」としてテレビに移行していきます。また、現在においては報道各社が制作するニュース番組で使用されるものだけでなく、事件事故に遭遇した人や被災者自身がスマートフォン等で撮影したものがSNSで公開されることもあり、リアルタイムでの情報共有も可能となりました。


アニバーサリー報道の役割


アニバーサリー報道の役割は、過去に起きた出来事を風化させないことです。ひとつは、「ある時ある地点でこの出来事が起きた」という事実を伝え、復興のための風化防止に繋げることを、もうひとつは今後発生しうるリスクへの備えを促すリスクコミュニケーションとすることを目的としています。


特に後者については、リスクコミュニケーションの受け手がリスクマネジメントを行う契機付けとして、受け手にいかに当事者意識を持ってもらうか、自分事だと捉えてもらえるかということが重要となります。顕在化していないリスクの多くはその影響を実際に目にすることができないため、当事者意識を持つことが難しいものです。また、遠方や遥か昔の時代で発生した災害や事件事故についても、実際に目にしていないために具体的な感覚やイメージを掴みづらいという伝承に関する難点があります。


これらの課題を打破するためにも、さまざまなメディアでは動画や音声を多く使用しつつ、その出来事が起きた日に報道することで、多くの視聴者にその出来事をリアルに伝えようとしてます。


過去を生かすために


過去の出来事を伝承するアニバーサリー報道は、まさに後世に過去の出来事を伝えることでその出来事の風化を防ぎながらリスクコミュニケーションを促しているのですが、それだけでなく、その報道を通して、人々に伝承や学習といった社会学習的側面を持つ機会の提供も行なっています。過去の出来事が忘れられると、その瞬間にその出来事は死んでしまう、なかったことになってしまうのです。そうであるからこそ、私たちは時々過去の出来事に目を向け、その日のことやそこから得られた教訓を通して現在や未来を考える必要があります。


サニーリスクマネジメントでも、今年は関東大震災から100年という節目の年にあたることから、関東大震災の復興に焦点をあてた連載「帝都復興院の為政家たち」を掲載させていただきました。これもまた、アニバーサリー報道の一種です。これを読んでいただき、そこから何か一つでも感じていただけるもの、考えていただけたことがあればと思う次第です。



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