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有事の避難所と日常生活

こんにちは、サニーリスクマネジメントです。

今回のテーマは、「シェルター」。2022年2月に世界の安全保障情勢が大きく変化してから、日々世界のニュースは東欧に目が向いており、国内においても東アジア情勢や国防に関する話題が多く上がるようになってきました。

「核シェルター」というと日本では普及率も低くイメージが湧かないだけに物々しい印象を抱くことも多いかもしれませんが、実はさまざまな面で実用的な施設なのです。


世界の普及率


世界各国の中には、人口に対する核シェルター普及率が100%の国家が2つあります。それはスイス連邦とイスラエル国です。前者は永世中立国として自国の力で国防力を構築しており、その一環として国民保護に関しても重点的に対策を練っています。また後者に関しても中東という不安定な情勢の中で、いつどのような攻撃があっても対応できるようにシェルターが設置されています。また、アメリカ合衆国では冷戦をきっかけに普及が伸び82%、アジアの中でもシンガポール共和国では1998年から新築住宅へのシェルター設置が義務付けられるようになり54%とシェルターは世界各国で普及しつつあります。一方、日本はというと、その普及率は0.02%と他国と比較した場合非常に低い数値となっているのです。


シェルターの構造と使いみち


そもそも「核シェルター」とはどのようなものなのでしょうか。その名の通り「核兵器の被害から逃れ一時的に生活するための場所」なのですが、それを実現するには、①地下に造る、②気密性を高める、③空気清浄機能を伴うことが必要となります。①地下に造ることについては、地上に造った場合に爆風や熱線、放射線による被害がどうしても大きくなることから、それらによる損耗を防止するためであり、②気密性を高めることについては、地上に広がっている放射性物質や毒ガスなどがシェルター内に入り込むことを防ぐことが大きな目的となっています。地下に鋼鉄の外壁や補強板で囲んだ箱のような構造に特殊な素材を使用した防護能力のある部屋を造ることで外気から遮断された空間が完成します。③空気清浄機能を伴うことについては、②のようにシェルター内は密閉空間になるので、きれいな空気を供給することができなければ酸欠になってしまうことが関係しています。


これらの設備が整ってはじめて人々を被害から隔離できる「核シェルター」が完成しますが、実際にこのシェルターを使用する場面にはどのようなものがあるのでしょうか。まずは核兵器による攻撃があった場合が想定されるでしょう。また、核シェルターは放射性物質への被曝を防ぐことができる堅牢な造りになっているので、原子力発電所事故による放射性物質の漏洩にも対応できます。


防災にも使える?


核兵器を用いた攻撃に耐えうるシェルターなら、核物質を伴わないミサイルや爆弾による攻撃にも対応できます。また、放射性物質という目に見えないものを通さないほどの気密性があるため、火山噴火の際に噴火口から放出される火山性ガスから身を守ることもでき、地下に設置し密閉されているため津波や洪水で流されるようなことも考えにくいでしょう。このように、「核シェルター」として地下に設けられた部屋でさまざまな自然災害に対応することも可能なのです。


現在、日本においてミサイルの落下などの武力攻撃事態等が発生した場合の避難施設は内閣官房により設定されており、「国民保護ポータルサイト」から地図で確認することができます。そこで弾道ミサイル落下時の避難施設として設定されている「緊急一時避難施設」の多くは、区立や私立の小中学校、区民・市民センターやそれに準ずる施設のうちコンクリート造のものとなっています。また、その一部に地階を伴うものもあります。


ただ、小中学校や市民センターなどでは地階を伴うケースは非常に少なく、サイト上で「堅ろうな施設」と表現されながらも、その地階も必ずしも核シェルターのような密閉性があるとはいえません。核物質を伴わない場合には一定の機能は期待できますが、仮に核物質を伴った攻撃が発生した場合にはその機能は著しく減少する可能性があるのです。これは地下道や地下鉄構内に関しても同じようなことが言えます。また、24時間対応となっている施設も少ないため、時間帯によってはいざ避難しようとした際にシェルターとしての迅速な展開ができるかという課題もあります。


日本の現状を見てみれば他国のように新築物件にシェルターの設置を義務付けたり、国や自治体主導でシェルターの設置を進めたりするには時間がかかりそうです。もし仮に必要性が認識されていたとしても、本当に効果があり機能性の高い核シェルターを設置する場合は多額の予算が必要となり、さらに地権者や建物の所有者等との協議も重要となるため、実現までにはいくつものステップを踏まなければならないのです。


有事と平時の共存へ


やはり「核シェルター」や「シェルター」と聞くと戦争や災害といった身の危険を感じる事象や言葉が連想されます。70年近く安全保障に関する話題を遠ざけてきた国としては、「シェルター」とはいわゆる防空壕にあたるものですから、数十年前に作られた暗く光の届かない、ただ部屋の隅に座り込んでじっと外が安全になるのを待つ空間といった印象があるかもしれません。


しかし、世界ではシェルターを普段の生活で使用している人も多く存在しています。実はシェルターは密閉空間であることから、アンプやドラムを置いたり、ライブハウスさながらの煌々としたライトを設置したりしてバンド演奏ができる空間を造った人もいるのです。このほかにも、アパートの入居者や地域従民が普段は共用のコミュニティスペースとして使えるようにふかふかのソファーや本棚を置いた地域や、静かに集中して有事には即時に安全な場所で会議を行える会議室にしたり、小学校や幼稚園のシェルターであれば普段から子どもたちの遊び場として壁をカラフルに塗装したりおもちゃを置いたり、さらにはヨガ教室やフィットネススタジオ、ダンススタジオなど教室やスタジオとして使っている事例もあります。


これだけシェルターが日常に溶け込んでいるということは逆説的に現地の生活が常に攻撃のリスクにさらされていることを表していますが、シェルターはドアを閉めれば内部から出る音や光を漏らさないといった平時における利点もあるため、心置きなくまたは集中して活動に取り組むことができるのです。また、有事に見慣れない施設に避難するよりは、見覚えのある場所に避難する方が安心して避難できるという心理的な効果も期待できるでしょう。


日本でも近年徐々に話題に上がり始めた「核シェルター」は、緊急時に市民の命を守るだけでなく、日常生活を豊かにする可能性も秘めているのかもしれません。




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