中小企業のリスク対策は保険で充分?それだけでは危ない理由
- Hinata Tanaka

- 7月24日
- 読了時間: 6分
こんにちは、サニーリスクマネジメントです。突然ですが、皆さんは会社や家庭のなかでどのようなリスクマネジメントに取り組んでいますか?
BCPや避難行動をまとめたタイムラインを作っているという方もいれば、防災グッズや非常食を備蓄しているという方もいらっしゃるかもしれませんね。「保険をかけている」という声も上がりそうです。
危機が起こる前に、起こった後に備えて生命保険や損害保険に加入している人や企業は多いかと思われますが、「リスク対策は保険をかけて終わり」?それだけでは危ないかもしれません。
【目次】
保険はリスクヘッジ
ある現象(損失)が発生したときに保険金で損失を補填してくれる保険。もしもの時に補償があるのは心強いですよね。そんな保険は、リスクマネジメントの中でも「リスクヘッジ」と呼ばれます。
リスクヘッジは、ある特定のリスクに対して、その発生確率や被害を予測し損失を避けるという考え方です。たとえば損害保険では、過去の保険料・保険金に関する大量のデータ分析(地震保険ではシミュレーション)が保険料を決定づける要素のひとつとして利用されています。これはまさに、リスクの発生確率と被害発生に伴って支払った費用(補填した損失)を分析・予測したものです。
ただ、保険も全てのリスクをカバーできるわけではなく、たとえば地震や豪雨などあらゆる気象・地象を含む「自然災害」に対する保険商品を作ることは難しいと考えられます。上に「地震保険ではシミュレーション」と書いていますが、これは地震の発生周期が多様なために充分なデータが得られないことが理由のひとつとして挙げられます。
地震保険でさえこうした状況ですから、他の災害も含めると全てのリスクを総合的に予測して損失を計算するというのは非常に難しいことなのです。では、そうした保険で対応するのが難しい領域や未知のリスクに対してはどのように備えればよいのでしょうか。
リスクマネジメントは総合的な取り組み
保険が予測可能なリスクで生じた損失の補填であること、そして保険で対応できるリスクには限界があることを確認しました。こうした状況で有効なのが「リスクマネジメント」の取り組みです。リスクマネジメントは、どのようなリスクがあるかを特定して洗い出し、対応すべきか否か、対応するならどのような手法でどの程度対応するのかを総合的に検討する取り組みです。リスクヘッジもこのリスクマネジメントの中に含まれます。
保険はリスクが発生した時にその損害をお金という形で補填することで被害を小さくすることを目指します。一方で、リスクマネジメントはリスクが発生した時の損害そのものを小さくすることを目指します。リスクヘッジとリスクマネジメントの違いはここにあります。
家庭における地震対策を例にとって考えてみましょう。地震に対するリスクヘッジは、火災保険と一緒に加入することのできる地震保険です。地震が起きて被害が認められれば保険金が支払われます。地震に対するリスクマネジメントは、建物そのものの耐震や家具の固定です。地震の揺れを軽減したり家具の飛散を防いだりすることで建物自体を守ることができます。
中小企業のリスク対策は保険で充分なのか
先ほど家庭における地震対策を例にとってリスクヘッジとリスクマネジメントについて考えてみました。これを企業にスケールアップすると、リスクヘッジの代表的なものは同じく保険、リスクマネジメントの代表的なものはBCP(事業継続計画)であるといえます。
BCPは2011年の東日本大震災以降大企業では策定率が急速に上がりました。一方で、中小企業の策定率は緩やかな上昇です。大企業と中小企業の策定率の伸びかたの違いには、策定にかかるコストやリソース・ノウハウや企業の実数の違い、企業の性質などさまざまなものが複合的に影響しています。
リスクマネジメント取り組みが比較的伸び悩んでいる中小企業ですが、リスクヘッジはどうでしょうか。もしかしたら「危機管理はリスクヘッジで充分、何かあった時は保険金が下りるし」という考えもあるかもしれません。
ただ、次で述べるように中小企業においても保険によるリスクヘッジだけでは充分と言い切ることはできません。ミニマムでもよいのでリスクマネジメントをしておくことで、損失そのものを減らしより迅速な復旧が可能になります。
お金で補えない価値や機会もある
ではなぜ保険だけでなくリスクマネジメントの取り組みが求められるのでしょうか?その背景には、リスクマネジメントが持つ「損害の軽減」以外のメリットも期待できるからです。
リスクマネジメントの一部を構成するリスクヘッジとして保険に加入することは重要な対策の一部です。リスクヘッジは基本的に、リスクが発現してから少し時間が経った頃に効果を発揮します。たとえば保険であれば損失を補填するために保険金が支払われますが、保険金には上限があり全ての損害が完璧に補われるとは限りません。
また、保険金で補填することの難しい広義の損失も存在します。たとえば、ブランドの既存や信用の低下、従業員の能力や人柄、社内の組織力や士気がこれにあたります。リスクマネジメントは企業が主体となって取り組むものであるため、お金で補うことが難しいソフトの部分の向上が期待できます。
中小企業こそリスクマネジメントに取り組もう
資金や人材の面で余裕がないと、どうしても「もしもの時の補填だけあればいいか」とリスクマネジメントは後回しになりがちです。しかし、万が一リスクが発現したときにリスクヘッジの効果が現れるまで待てるか、リスクヘッジ後に再建できるか──つまり火災保険で例えるならば、火災が発生してから保険金が下りるまでの間持ち堪えられるか、保険金が支払われてから再建やリスタートという形で企業活動や雇用を守ることができるかが肝要であり、それに応えるものこそがリスクマネジメントなのです。
持続可能な企業活動に欠かせないリスクマネジメントは、決して大掛かりなものだけではなく、リスクを洗い出したり、リスクへの対応策をできる範囲内で考えたりとスモールスタートで始めることもできます。
リスクマネジメントっていっても実際何をすればいい?
我が社に合ったリスクマネジメントのやり方って?
社内にリスクマネジメントをできる人材が欲しい
リスクマネジメントについて検討されている場合は、ぜひサニーリスクマネジメントまでご一報ください。伴走型で、リスクの性質や規模感に合わせた内製危機管理の構築・運用を支援いたします。




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