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令和6年能登半島地震にみる災害フェーズと報道

※この記事は、2024年1月1日午後4時から2024年1月5日午後23時までに報道各社や国・各省庁・地方自治体等により発表された情報をもとに構成しています。詳細・最新の情報等は国・地方自治体・企業等のWebサイトをご覧ください。

 

こんにちは、サニーリスクマネジメントです。2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震は、現在も救助が続いているほか、ライフラインの途絶が続いている地域がある一方で、一部地域ではボランティアの受け入れ体制が整い、災害ボランティアによる活動が始まるなど、復旧期に近い時期となってきました。サニーリスクマネジメントでは、昨日まで石川県・富山県・新潟県を中心とした令和6年能登半島地震の概況と当該地震の傾向の分析についてお伝えしてきました(2024年1月5日までの概況と地震分析はこちらをご覧ください)。今回の記事からは、危機管理における一般的なメソッドも交えながら、令和6年能登半島地震を足掛かりに災害報道を取り扱います。

 

災害フェーズにおける現在の立ち位置

 

令和6年能登半島地震は、発災から5日が経過しました。これまで多くの地域で救助や避難所の開設、被害の確認作業や調査など、人命救助や救助作業・復旧作業を行うために必要となる情報の収集が行われてきました。特に未救助の被災者の生存率が高い状態にある発災後72時間を中心としてこのフェーズを「発災期」と考えることができます。同じ災害でも場所によって被害の程度もさまざまであり、自治体の施設や職員も被災している場合はマンパワー不足に陥りやすいため、次のフェーズへの移行は場所によって異なってきます

 

例えば、すでに災害ボランティアの活動が始まっている富山県は、支援の受付や瓦礫の撤去、避難所生活の安定、インフラの回復、罹災証明書の発行など各世帯レベルでの生活の再建を目指すフェーズである「復旧期(I)」に入っていると考えることができるでしょう。一方で、5日、北陸電力が志賀原発の安全点検を行い、安全上問題となりうる被害が確認されなかったことや変圧器の故障や漏油とそれに伴い外部電源の一部が使用不能な状態にあることなどの報告が行われた石川県は、いまだ被害の全容把握が完了していなかったり、救助者が残っていたりと、緊急性の高い情報については各機関で確認が進んでおり復旧期が近づいているものの、発災期のフェーズにある状態と捉えることができます。


オレンジと黄色の円

図1 災害フェーズのサイクル

 

さらにこの後は、仮設住宅での生活の安定や土地区画整理などに始まる地域再建を行う「復旧期(II)」、次の災害対策を講じながら、災害の教訓を継承していく「復興期」、そしてまたいつかの将来に災害が発生して「発災期」に入る……というサイクルが構成されています。

 

各フェーズにおけるジャーナリズムのありかた

 

災害のフェーズによって、被災地の状況の伝え方にもさまざまな形が生じます。発災期は、全国ニュースなどの速報によって発災の事実や気象警報を伝えるのが何より重要です。発災直後にファーストレスポンダー(自衛隊や警察、消防などの救助等を担う機関)が被害状況の確認のためなどに出動するヘリコプター等と時を同じくして空路で被災地へ向かっているのが、テレビ局や新聞社の記者やカメラマンを乗せたヘリコプターです。1日に発生した能登半島地震や2011年の東日本大震災など、特に広域にわたって地震による揺れや津波の影響が出る可能性がある場合やこれまでにみられなかった大災害の場合は、テレビ中継やラジオ速報を通じて、特番を通じて放送するほか、通信社により国内外に速報として報道されます。次いで救助に関する情報や市町村・県・国等の対応、各省庁や交通・ライフライン関係への影響が報じられます。

 

復旧期(I)が近づくと、交通やライフラインの復旧に関する情報や避難所等で取材した避難者の声などが報道されます。全国紙やキー局の提供するニュースで大きく扱われるのは、概ね復旧期(I)までです。このほかにも、ボランティアや支援物資などについての情報も提供されるでしょう。復旧期(II)が近づくと、被災地でのオペレーションはそれまでの緊迫したものから、少し時間をかけてでも緻密に実施することが求められるようになります。例えば被災した地域の住民に集団移転をしてもらう場合、住民への説明や意見のすり合わせが必要になります。このように時間のかかるオペレーションが増えるため、地元紙や地元のテレビ局による地域に密着した取材が多くなります。

 

復興期になると被災地の多くは新たな街が完成し、住民が新たな生活を始めるフェーズとなっているため、復興までの歩みをまとめたドキュメンタリーや、災害の発生した日などの節目の日に報道する「アニバーサリー報道(記念日報道)」による現在の被災地の復興状況を知らせるような地域密着的な報道や長期間の取材結果をまとめた報道が行われます。このように、災害ジャーナリズムは各フェーズによってその形が異なっているのです。

 

災害フェーズにおける被災者のニーズは?

 

ここまでは各災害フェーズにおける報道の傾向や伝え方をお伝えしました。一方で、同じフェーズで被災者のニーズを考えた場合、どのようなことがいえるでしょうか。フェーズによって報道のありかたが異なるように、被災地や被災者が伝えてほしい情報・知りたい情報もフェーズによって異なってきます

 

発災期には、まず自らの居場所が安全なのか危険なのか、発災後どのような行動をとるべきなのかがニーズとなります。居住地で観測した最大震度はいくつだったのか、津波が来るのは何分後か、すぐに避難すべきなのかどうか──命を守るために必要な行動を判断するための情報の提供が望まれます。もし救助が必要となった場合は、テレビやラジオ、あるいはSNSを通じて、ファーストレスポンダーが被災地へ向かっていることを知ることができるかもしれませんし、避難した場合でも、次の地震や津波についての情報を得たり、少しだけでも災害の影響を知ったりすることができるかもしれません。

 

復旧期が近づくと、被害状況だけでなく、ライフラインの復旧に関する情報のほか、ボランティアの受付が始まったことや、支援物資の搬入が始まったことなど、避難所生活の確立と継続に役に立つような情報があると安心でしょう。復旧期(I)及び復旧期(II)では、ただ被害状況を羅列した情報や災害の原因などについての情報よりも、より地域に根ざした支援情報などが求められます。復興期になると、前述のドキュメンタリーなどを通じ、被災地が災害を乗り越えた事実を被災地外に知らせることが重要となります。大規模災害や局地的災害の場合、広範囲または一点に集中する形で街そのものや産業構造が崩れる可能性があります。ただ、被災地には災害を乗り越えて復興した自治体や市民による努力が実ってこその再建後の街が存在します。これは、過去の惨事から回復した場所を訪れることで希望を感じるホープツーリズムに繋がる観光資源として活かすことができるほか、現在進行形で復興が続いていることを知らせ応援してもらったり、地域の一体感を生んだりすることにもなります。また、アニバーサリー報道を通じて災害の風化を防ぐことやその街が被災地外に知られ続けることに繋がり、災害の継承や地域の広報に大きく寄与することになります。

 

令和6年能登半島地震での実際

 

ここまで災害フェーズごとの災害ジャーナリズムの形と被災地のニーズについてお伝えしてきました。報道したいこと・報道してほしいことがそれぞれの立場で存在していますが、災害ジャーナリズムの中でも特に発災期におけるジャーナリズムでは報道とニーズのミスマッチが起こることがよくあります。

 

一極集中がその最たる例です。災害の発生とともに報道各社はヘリコプターなどで上空から災害を撮影し報じます。この時、どうしてもセンセーショナルな場面を捉えて災害の深刻さを伝える、インパクトを残す、という報道における王道ともいえる状況が発生します。災害の影響の大きさやその爪痕を伝えるには確かに最も被害の大きな場所を撮影するのが最適なのですが、これを各社が行うと、結果的に報道の一極集中が発生することになるのです。この傾向は、阪神・淡路大震災での神戸や東日本大震災での宮城・福島、令和6年能登半島地震での能登半島北部など、数々の大災害によって示唆されています。

 

被害の大きい場所を報道することは当然なのですが、その一方で、小さな被害であっても支援を必要としている場所のことが知られず、知られざる支援を必要としている場所に支援が行き届かないということが発生してしまいます。また、被災者が「あの市は被害が大きくてたくさんニュースになったから支援もたくさん届いているけれど、うちの市は被害を受けているにも関わらずあまり報道されなかったからそもそも知られていなくて物資が届いていない、同じ被災地なのにあの市は特別扱いされている」といった落胆を感じる可能性もあります。実際に令和6年能登半島地震においても、能登半島北部の市町を中心に各市町1万数千件の報道がある一方、佐渡付近で地震がやや頻発し建物倒壊やライフラインの被害もあった新潟県に関する報道は県全体で約1万7千件といった状態(5日23時時点での「Googleニュース」検索結果)で、被災者のニーズが満たされていないことが懸念されます。

 

復旧期に向けてなだらかなジャーナリズムを

 

復旧期に入ると、全国や海外からさまざまな支援物資が届いたり、ボランティアが現地入りしたりします。この時に少しでも被災者のニーズに細かに応えることができるムーブメントを作るきっかけとして、災害ジャーナリズムもその役割と効果を発揮できるのです。

 

現在も救助等が続き発災期フェーズの場所もありますが、いつかは必ず復旧に向けて動き出す日が来ます。その時のためにも、地元メディアからの発信力の強化やSNSを通じた個人レベルでの正確な情報発信なども必要となるでしょう。

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